郷土料理ものがたり紀行    福井編

住みやすさ日本一が誇る伝統食文化

  • text : 宮田耕輔
  • photo : 西村幸起
  • edit : nano.associates 竹内省二

福井県は日本列島のほぼ中心に位置し、京阪神・中京からほど近い日本海側の県です。かつて奈良・京都からも海が近く、都へ食材を供給する場所として「御食国(みけつくに)」と呼ばれていました。現在、共働き率全国1位、3世代同居率1位と、働き者の県であり、家庭環境・地域環境に優れ、学力・体力ともに日本の中でもトップクラス。加えて「住みやすさ全国1位」に選ばれ続ける福井県。これらの要因の一つでもあるのが食文化に他なりません。果たしてどんな伝統料理がこの土地に受け継がれているのでしょうか。福井の食文化に詳しい、仁愛大学の谷洋子先生にお話を聞いてみました。

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左)福井は清らかな水が至る所から湧き出て、人々の生活に欠かせない存在に 中)豊富な水が福井平野に流れ込み、透き通るようなコシヒカリを生み出す 右)福井市の中心部を蛇行する足羽川(あすわがわ)はかつて物流の一翼を担っていた

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「信仰の篤い土地が育んだ長寿食」

福井の食文化は、宗教が大きく関わっています。福井は曹洞宗大本山の永平寺や、蓮如上人による吉崎御坊があるなど、信仰篤い土地でもあります。仏教が伝えたのは仏の教えだけでなく、野菜や大豆を中心とした精進料理という食文化も伝えてきました。特に永平寺の宗派である曹洞宗は、食事を作ることも修行の一つという教えがあるほどです。ただ野菜を切って、煮て、焼いてというシンプルな作り方ではなく、一手間も二手間もかけることを常としてきたと思われます。その食文化が民間にも広がり、食に対する心構えや作法が広がっていきました。
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谷先生は福井の食文化についてのエキスパート

北陸地方全域で広がる「報恩講料理」はまさにその代表的なもの。報恩講というのは浄土真宗の開祖・親鸞聖人の命日に営む仏事のことですが、仏事が終わると皆さんで食べるのが「報恩講料理」です。地元で取れた旬の野菜を使った一汁三菜が中心になっています。この料理はその場で食べるだけでなく、各家庭に残りを持ち帰り、家族で分け合いながら食べる風習も残っています。「ありがたい」、「ばちがあたる」という言葉が小さい頃から身に付いている福井県民のその裏側には、仏教への信仰心、そして報恩講料理文化が強く残っているのかもしれませんね。
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報恩講料理の一つ、小豆と里芋の煮物。里芋の甘さと小豆の甘さを十分に感じられる一品
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