郷土料理ものがたり紀行 香川編
香川県は麺文化の花開く土地で、うどんのほかに手延べそうめんも有名です。日本三大そうめんのひとつにも数えられており、小豆島を中心に多くのメーカーがあります。小豆島にそうめんの製法が伝わったのは約400年前と伝えられています。島には、そうめんを細く伸ばす時に使われるゴマ油の製油所、ツユに必要な醤油の醸造所の両方があり、そうめんが産業として発展したこともうなずけます。島の人にとっては、冷たくしたり、温かくしたり、年中そうめんを食べるのは当たり前です。麺をカットした時に残る「ふし」と呼ばれるU字の部分も、みそ汁などに入れて食感を楽しんでいます。
小豆島の手延べそうめんは有名ですが、観光客にとって残念なことは、島内にそうめんを出す飲食店が少ないことです。どの家にもある当たり前の食べ物なので、わざわざ店を出す人がいないのです。その状況を危惧して、そうめん店を出しているのが「作兵衛」です。本業は手延べそうめんメーカーですが、自社工場でつくられたそうめんを年中提供しています。コシがあり、のど越しがよいと評判で、観光客だけでなく島の人も常連客になっています。作兵衛の味を引き立てているのは、小豆島の醤油からつくられたツユ。社長の高橋昌紀さんは「小豆島のそうめんをおいしく食べるなら、同じ風土の中で育まれた小豆島の醤油を使うのが一番」と、相性の良さを強調します。そうめんと醤油、両方のおいしさをお互いが引きだしているそうです。ところで、そうめんといえば夏のイメージがありますが、高橋さんは冬の冷たいそうめんもおすすめしています。「暖かい部屋で、冷たいそうめんを食べるのは格別だ」そうで、作兵衛では冬でも冷たいそうめんが人気です。
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