郷土料理ものがたり紀行 宮崎編
宮崎市・宮崎西ICから東九州自動車道を北上し、延岡市へ。延岡ICより約15分で到着するのが、大瀬川に架かる「延岡水郷鮎やな」です。延岡市をはじめとした県北部の河川はいずれも清らかな水をたたえた五ヶ瀬川水系の一級河川。流域一帯では10月ごろになると腹に卵を抱えた落ち鮎を狙うために、石や竹などで組まれた「やな場」が登場し、季節の風物詩ともなるそうで、この鮎やなについて伝統鮎やな師である髙橋生矢(せいや)さんに説明いただきました。
「やな場を建てるだけなら誰でもできます。しかし、川の流れを見極めて1ヶ月半から2ヶ月持ちこたえられるやな場を造れるかどうかというのが鮎やな師の技術ですね」とは髙橋さん。17歳の頃に父から受け継いだものの、自然の力に耐えられるやな場にできるかどうか、縛る縄や竹の幅で微妙に強度や漁獲量が左右するやな場づくりは長年の経験と勘が生かされるものだとか。小さいころから川で遊んでいた髙橋さんにとって、日々変化する川の状況や、そこに生きる鮎の生態さえも把握したやな場づくりは、それこそ職人の腕次第と言えます。
そうして伝承されてきたやな場の近くでは、落ち鮎を炭火で焼く香りが漂い、それが「日本のかおり風景100選」にも選ばれているという延岡の鮎。「延岡水郷やな/あゆ処 国技館」の竹内敏朗さんいわく「古くは平安時代に地域の名産として取り上げられ、また江戸時代には幕府への献上品として送られていたほど、味、香り、姿ともに評判だったそうです」という鮎は、大瀬川の川面を眺める河川敷の食事処にて塩焼き・味噌焼き・背ごし・甘露煮・唐揚げなどでいただく事ができますが、延岡の鮎料理における郷土性は調理の過程にあるのではなく、やな場の歴史や、鮎という素材そのものの特徴が反映されているようです。
では、その延岡市の西部にあたる山間地域ではどのような自然の恵みが料理へと反映されているのでしょうか。民俗学者・柳田国男が、日本民俗学の出発点となる著書「後狩詞記」に記した椎葉村へと足を運んでみました。
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