郷土料理ものがたり紀行    香川編

醤油が導く香川の食文化

  • text : GOOD NEWS 佐々木 和
  • photo : せとうちカメラ 中村政秀
  • edit : nano.associates 竹内せいじ

chapter 3「醤油から生まれたもうひとつの島の味」

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羅臼産昆布を直火でじっくり煮込んだ佃煮「角切昆布」

小豆島の優れた醤油文化は、もうひとつの食文化を生み出しました。それが「佃煮」です。きっかけとなったのは、食料の乏しかった戦時中。芋のツルを醤油で煮たところ、とてもおいしくなり、それが評判となって佃煮産業が広がったそうです。現在、小豆島には多くの佃煮工場がありますが、今でも直火の手作りにこだわった少量生産を続けているのが「小豆島食品」です。午前と午後、社長である久留島克彦さんが、一人で調整できるだけの量を仕込んでいます。具材が焦げ付かないようにかき混ぜる立ちっぱなしの作業で、手を休める暇はそれほどありません。小まめに味を確認しながら、誠実に、丁寧に炊き上げています。

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直火の手作りにこだわり、丁寧に炊き上げています

小豆島食品では、昆布や海苔、しいたけなど定番の商品のほかに、小えびや親鳥など、少し変わった佃煮も製造しています。そのすべてに共通しているのは、国産の食材を使うことです。北海道は羅臼の昆布、福岡のきくらげ、大分のしいたけ、喜界島の砂糖など、全国の良質な食材を選んでいます。それをひとつの味にまとめるのが、地元の醤油です。久留島さんが選んだのは、ヤマロク醤油の鶴醤。醤油としては高級品ですが「佃煮の味は醤油が決め手。ここに妥協はできませんよ」と、意に介しません。選び抜いた食材を、ゆっくり時間をかけて炊き上げる小豆島食品の佃煮は、驚くほど香りがよく、すっと引く後味が特徴です。「地元では、佃煮はいつも食卓に並んでいる当たり前の食べものです。毎日食べるものだから、本物の味を届ける責任がある」。その思いを胸に、今日も久留島さんは釜の前に立っています。

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醤油や食材、そして手作りにこだわる社長の久留島克彦さん

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