郷土料理ものがたり紀行    香川編

醤油が導く香川の食文化

  • text : GOOD NEWS 佐々木 和
  • photo : せとうちカメラ 中村政秀
  • edit : nano.associates 竹内せいじ

chapter 6「国境を越えて愛されるしょうゆ豆」

DSC_7487

ミシュラン観光ガイドで三つ星を獲得した庭園「栗林公園」。海外からも多くの方が訪れる公園の入口の隣で、香川の物産を取り扱っているのが「栗林庵」です。現代的に解釈した和の意匠を凝らす店内には、所狭しとお土産物が並べられています。お菓子、食品、工芸品、雑貨、オリーブ製品など、新旧の物産がひしめく中で、10種類ほどの「しょうゆ豆」がしっかり売り場を確保し、存在感を放っています。

DSC_7441

伝統の食品である「しょうゆ豆」が今でも人気の秘密は何でしょうか。「あらためて聞かれると不思議ですね」と笑うのは、スタッフの藤澤めぐみさん。人気の理由のひとつに、バリエーションの多さをあげてくれました。一般的なそら豆の製品だけでなく、白花豆や落花生をつかった製品があり、「長い歴史の中で地域の特産物と結びついて種類が増えたのかも」と分析します。宿泊先の旅館の料理でしょうゆ豆のおいしさを知って、お土産物として探しに来る方が多く、おもしろいのは海外の方にも受け入れられていることです。どうやらしょうゆ豆のおいしさは国境を越えるようです。地元で生まれ育った藤澤さんは、「ショーユマメ、アリマスカ」とカタコトの日本語で探しにくる方がいると、うれしくてついつい対応にも熱が入るそうです。「しょうゆ豆って、いろいろなシーンで活躍できる食べものです。おかずにしてもいいし、お酒の肴にもなる。香川では子どものおやつにもなっている」と藤澤さん。多くの人に、しょうゆ豆のおいしさを知ってもらいたいと願っています。

DSC_7481

スタッフの藤澤めぐみさんは「しょうゆ豆」はお土産として人気があるといいます

ひとつの調味料が地域の食文化を育んだ

今から400年ほど前、「醤油」という新しい調味料に出会った香川の人は、そのおいしさに心から感動したのだと思います。自分たちでこの味をつくろうと努力を重ね、ついには産業として成長し、地域に定着しました。山、海、川がもたらす多くの食材、その味を引き出すのが醤油です。調味料であるため、料理のメインになることはありませんが、醤油があるから生まれた郷土の味がたくさんあり、いくつかの料理は今なお愛され続けています。
香川と言えばさぬきうどん。ですが、そのダシに使われる醤油の1滴にも文化があり、郷土の誇りが込められているのです。

[offer, num=6]
特集に戻る