郷土料理ものがたり紀行    秋田編

長く厳しい冬から生まれた、雪国ならではの保存食文化

  • text : 児玉菜穂子
  • photo : 伊藤靖史
  • edit : nano.associates 竹内せいじ

東北地方の北西部に位置する秋田県。冬になると厳しい表情をみせる日本海に面し、内陸部に目を向けると雄大な山々がそびえ立つ、豊かな自然に囲まれた地域です。夏は関東以南に比べると過ごしやすい気候ですが、冬は雪が多く降り積もり厳しい寒さが長く続きます。沿岸部は日本海から吹きつける冷たい強風にさらされ、内陸部のほとんどは建物1階部分の窓が積雪で隠れるほどの豪雪地帯。こうした長い冬を過ごすため、旬のものを保存食として加工して工夫し、冬だからこそ楽しめる料理が定着するなど、秋田には独特の食文化が根付いています。先人の知恵が生み出した、秋田県の冬の郷土料理の数々。どのようなものがあるのかを探るために、秋田県各地を巡ってみました。

chapter 1「秋田の冬を代表する郷土料理と食文化について」

最初に訪ねたのは、秀麗な姿を見せる鳥海山の麓にある由利本荘市鳥海町の高橋千恵子さん。高橋さんは、農村女性が食や農業経営などを学び様々な地域活動を行う、秋田県農山漁村生活研究グループ協議会の会長を務めています。高橋さんに、秋田の冬の郷土料理の種類と特徴についてお話を伺いました。

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秋田県農山漁村生活研究グループ協議会会長の高橋千恵子さん。普段は農業を営み、切り花や米を栽培・出荷しています

寒さで冷えた体を温める鍋料理が豊富

まずは秋田の冬を代表する郷土料理とは?との質問に、高橋さんが真っ先にあげたのは「きりたんぽ鍋」。秋田では各家庭定番の鍋料理です。ごはんを潰して棒に巻き付け、火であぶったものを「たんぽ」と呼びますが、「きりたんぽ」とは「たんぽ」を鍋に入れるために切ったもの。「たんぽ」そのものは年中作られていますが、鍋料理にして食べるのは冬がほとんどです。「ほかにも冬が旬の鱈汁、夏に採って保存した山菜を使った納豆汁などもあります。どちらも寒い冬にはとっても温まりますよ」と、冬に楽しむ鍋料理の数々を教えていただきました。

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鶏がらスープで食べるきりたんぽ鍋。出汁と具材には秋田県産の比内地鶏を使うのが定番

旬のものを加工して保存食に

冬に水揚げされるハタハタは、秋田の冬を象徴する魚です。淡泊でほぐれやすい身は食べやすく、うろこがないため調理も簡単。ハタハタを漬け込んだ調味料「しょっつる」を使った鍋料理や、「ハタハタ寿し」などがハタハタ料理の代表格として親しまれています。「ほかにも塩漬けや佃煮などにして一年中食べられるようにします」と、ひと手間加えて保存する方法も。また「最近いぶりがっこが全国的に有名になってきていますが、秋田県は漬物文化も盛んです」と高橋さんが語るように、野菜はさまざまな漬物へと姿を変えて冬の間の保存食になります。「がっこ」とは秋田の方言で漬物のこと。冬になると農作業ができず、大量に降り積もった雪を寄せるのが主な仕事になるという地域では、「雪かきの合間のおやつ」としても親しまれているとか。「がっこ」はいつでも手軽に食べられるものとして愛されています。

冠婚葬祭の珍しい口取りとお米を使ったお菓子たち

秋田の県南地域で冠婚葬祭を中心に人が集まる場に欠かせないという、いろいろな具材を固めた「寒天」。昔は各家庭から様々な料理が持ち寄られて冠婚葬祭で出されていましたが、そこで運びやすくて食べやすい寒天料理が重宝されたとのことです。「サラダ、卵、牛乳、コーヒー、なんでも固めます」というように材料は多種多様。秋田県内の食料品店ではお総菜として販売されています。
さらに、郷土のお菓子についてもお聞きしました。「秋田は米の産地なので、米や米粉をつかったお菓子がいっぱいあります。おやき、花みそ、松皮餅、バター餅などお餅のお菓子が多いですね」と、米どころならではの食文化を感じるものばかりです。続いては個々の郷土料理について詳しくご紹介していきます。

秋田県農山漁村生活研究グループ協議会

秋田県内の農村女性で構成される協議会で、農業経営や農家生活の研究、知識や技術等の情報交換を行っています。地域社会への貢献にも取り組んでいて、会員数は2016年3月現在で786名。創立50周年記念に発行した「改訂あきた郷味風土記(きょうみふどき)」は、県内外で好評を得ています。創立40周年記念で発行した同誌の改訂版で、120種類を超える秋田の郷土料理がまとめられた一冊です。購入先/http://www.kappan.co.jp/dish_book/order_form.html(秋田活版印刷株式会社)

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