郷土料理ものがたり紀行 沖縄編
日本列島の南西に位置する沖縄は、言わずと知れた国内最大の観光地。そのほとんどが亜熱帯に属し、一部は最寒月の平均気温が18度を超え、熱帯に属します。明治時代に沖縄として県がおかれるまで琉球王国として歩んで来たこの島は、その気候や文化・歴史の側面からみても、日本の中でとりわけ特殊な存在と言えそうです。もちろんそのなかで育まれてきた料理についても同じこと。さて、長寿の島と言われた沖縄では、どんな個性溢れる郷土料理に出会えるのでしょう。
むわっと肌にまとわりつくような、湿気を伴う南国の空気。空はどこまでも広く、青い海はその美しいグラデーションで見るものを魅了します。空腹をそのままに、早速向かったのは那覇市久茂地にある「松本料理学院」。「沖縄の料理は大別して“琉球料理”、“沖縄料理”にわけることができます」と話してくれたのは、昭和44年に開校された歴史あるこの学院の、学院長を務める松本嘉代子さんです。
「琉球料理とは沖縄の食材や風土、習慣などに根ざした伝統的なもの。そのなかで、中国や日本の影響を受けながら“おもてなし”の料理として発展してきたのが宮廷料理。慎ましい暮らしの中で、少ない食材でお腹をみたし、栄養を取るためにさまざまな知恵とともに育まれたのが庶民料理。このふたつに大別することができます。宮廷料理では“泣き声以外は全部食べる”といわれる豚肉がメインの食材。一方で沖縄料理とは戦後、アメリカを中心とした欧米の食材や食文化が流入し、これまでの琉球料理とちゃんぷるー(ごちゃまぜ)になったもので、現在主に食されている料理のこと」。郷土料理と一口に言っても、その成り立ちから異なる3つの料理が存在するというのです。そう聞いては実際に食べ比べてみないわけにはいきません。抑えきれない好奇心とともに、松本料理学院を後にしました。
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