郷土料理ものがたり紀行    沖縄編

「“くすいならちくみそーり”の心」

  • text : セソコマサユキ
  • photo : camenoko studio 大城亘
  • edit : nano.associates 竹内省二

chapter 2
「ボリューム満点の沖縄料理、知恵と工夫の琉球庶民料理」

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街の食堂はその活気も魅力。地元客、観光客隔てなく賑わいを見せる

最初に訪ねたのは那覇市松山、沖縄のメインストリート国道58号沿いにある大衆食堂「三笠」。いわゆる「沖縄料理」を頂くことができるお店です。豆腐料理を中心に庶民の胃袋を満たし続けて40年以上、その年月分の味わいを持つ扉を開けると、亜熱帯の熱気にも負けない賑わいに包まれていました。右手のカウンターの中ではおばちゃんたちが忙しなく動き回り、店内では地元客も旅行客も入り混じって心地よい喧噪を生み出しています。テーブルの脇には「お水、お茶、バターはセルフサービスです」の文字。こちらでいただいたのは「野菜ちゃんぷるー」。たまねぎ、にんじん、もやしにレタスといった野菜がたっぷり。もちろん豆腐が入って最後にポークとコンビーフハッシュ。醤油を利かせた濃いめの味付けで、ご飯がすすみます。そのほか、ご飯にひき肉とたまねぎの卵とじをのせた沖縄独特の「ちゃんぽん」や、「ポークたまご」から野菜、豆腐、ふーなどのちゃんぷるー、「スキヤキ」や「トンカツ」「カレーライス」までメニューに並びます。一品毎の料理だけでなく、その雰囲気も、メニューもすべてがちゃんぷるー(ごちゃまぜ)。暑い日々を元気に乗り切る沖縄のひとびとの、溢れ出るエネルギーが感じられます。

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ボリューム満点の「野菜ちゃんぷるー」。野菜たっぷり、ポークやコンビーフハッシュもたっぷりの豪快な一皿
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「そーみんたしやー」と「マコモのイリチー」。どちらもシンプルながら出汁の効いたコクのある味わい

続いては琉球料理を頂きに「手料理の店 しむ」へ。「幼いころからお祝い事があれば親戚が集まってすべて家で行っていました。そのころお手伝いして、食べてきた料理を、体が覚えてるんです」。そう語るのはこの店を33年間休まず切り盛りしてきた岸本留美子さん。沖縄の炒めものといえば「ちゃんぷるー」が有名ですが、単にごちゃまぜの炒め物、ということではなく、「豆腐が入った炒め物」のことをさします。一方、素材ひとつでさっと炒めるたものを「たしやー」というのだそう。今回頂いたのは「そーみんたしやー」。そうめんを茹でたあと、カツオだしと、ほんの少しの塩、醤油で味付けさっと炒めます。最後にネギを散らすだけ。非常にシンプルな料理ですが、そのシンプルさからは想像できないほど、コクのある、深い味わいを楽しむことができるのです。

「琉球庶民料理は、少ない材料なのに栄養があって、現代の思考で考えても、驚くほど理にかなっているものが多いんです。例えば“ソーキ骨のおつゆ”。ソーキ(豚のあばら骨)、昆布、冬なら大根、夏なら冬瓜のたった3種類の食材だけなのにバランスがとても良い。お肉でタンパク質、昆布でミネラル、野菜でビタミンが取れる。だけど肉と昆布から旨味が出て(イノシン酸とグルタミン酸)「あじくーたー」(単純に味が濃いことではなく、旨味が効いたコクのある味、というニュアンスの沖縄方言)になるからすごくおいしいんです」。そーみんたしやーを頂いていたら、そんな松本先生の話しが思い出されました。

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